~清潔で明るい、行きたくなるトイレづくり~
幼稚園・保育園・認定こども園の園舎づくりにおいて、トイレは重要な要素の一つです。
ひと昔前までトイレは暗くて日の当たらない建物の端っこに設置されるような形で、
怪談話にも出てくるようなマイナス印象の場所でした。
しかし昨今はトイレはもっと明るく清潔感のある存在であるべきだという考えが浸透してきており、
私たちもかねてより「明るく楽しい、行きたくなるトイレ」を心がけ、
あえて日の当たる明るい場所に設けることを心がけています。
さらにトイレを楽しく創り、園舎の特徴の一部として位置付ける事で、
トイレという場所は当たり前に存在する生活の一部である事を、自然に意識づけしていけると考えています。
<器具選定と洗浄方式、設備に対する配慮>
幼稚園・保育園・認定こども園などの園児の利用する器具は、当然こども用ですが、
年齢に応じた器具選定や設置高さなど、園の方針に合わせた配慮も必要です。
現在はメーカーさんが長年研究してきた推奨の設置基準もありますが、
それらをベースとしてさらに、保育のプロである先生方の意見や、
今までの園の使い方を踏まえて、決定していく事が大切です。
洗浄方式も考える点です。自動洗浄方式の器具は節水などに利点がありますが、
一方で自動洗浄以外の方式の場面において、流し忘れや、流し方が分からない、水の止め忘れ等の
事例が発生してしまう事もあり、その点について危惧される場合もあります。
また男の子用の小便器についてはセンサーの感度や向きによっては近づいただけで流れてしまうため、
逆に水が無駄になってしまうケースもあり、配慮が必要です。
<多機能トイレの設置への工夫>
近年はユニバーサルデザインの考えに沿って、幼稚園・保育園・認定こども園の園舎においても
多機能トイレを条例で、普及を促進させる行政がほとんどであり、義務付けをする地域も増えてきました。
多機能トイレは条例によって「誰でもトイレ」や「みんなのトイレ」、「多機能トイレ」とも表現され、
一定の広さと機能を有したトイレです。
園舎においてあるべき多機能トイレというのはしっかり使える多機能トイレであるという事です。
子どもたちが好き勝手に入れてしまう構造であってはなりませんし、
普段使わない状態になってしまって、倉庫状態になってしまう等の「もったいないスペース」にならないよう、
「如何に使用するか」をしっかり決めて計画する事が大切になります。
多機能トイレは玄関付近に設定されることが多いので、玄関空間の演出の一部として工夫を取り入れた
面白いものにしていくような演出も出来たらと考えます。
<安心して使える大人用トイレ>
幼稚園・保育園・認定こども園の園舎において、先生や保護者さんなど大人用のトイレも当然必要になります。
大人用のトイレは出来る限り2か所以上設定する配慮をし、先生方が利用する事を考慮して、
幼児トイレ内への設置や、廊下に面して設置する等、柔軟に考えています。
催し物の際の保護者さんの利用も考え、兼用するために設置位置も工夫します。
多機能トイレとの兼用など、出来る工夫はありますので、プランに適したご提案が出来るよう心がけています。
<床材・腰壁の素材選定>
トイレはその機能上、臭いやメンテナンスの容易性を考慮する場面が多くなります。
掃除がし易く、水気に強い床材、腰壁素材(壁材)の選定や、空気がこもらないように換気に対する配慮をします。
仕上材なので多くの工夫が出来る部分の一つでもあります。
腰壁だけ特徴のあるタイルを使用したり、トイレブースに発色の良い仕上材を採用するなど、
お金を掛けずに素材や色で楽しい空間を演出することができる部分であると考えています。
床材には出来る限り明るい色の採用をお薦めしています。
明るい床材にすると、汚れが目立つのではという話がありますが、逆に汚れが目に付く事によって
清潔に保たれるケースの方が多く、汚れが目立たないと掃除を怠ってしまいがちなようです。
明るい材料によって、空間も明るくなり、メリットの方が多いと感じています。
また、トイレの工夫したレイアウトに合わせて、床材を色分けするなど、床素材でも工夫ができ、
トイレは一番工夫できる場所の一つであると考えています。
<掃除用具とその利用方法とのすり合わせ>
掃除用具、洗剤などの保管場所も考慮する必要があります。
こどもが自由に積極的に触れられる部分と、開けられない・触られれないようにするべきところの分けを
明確にすることが大切と考えています。
また、汚れてしまった衣服の洗濯や、幼児シャワーパンの必要性、
物干しスペースなど、使い勝手との連携も考慮することも大切です。
~まとめ~
デパートやホテル、駅など、日本のトイレは清潔で綺麗であると認識されているところです。
買い物途中、わざわざデパートのトイレを借りるといったこともあるかと思いますが、
特に「トイレを見ればその場所が分かる」という事が言われるくらい、建物において、大切な場所となっています。
「園舎のトイレを見れば、園が分かる」という意識で、力を入れて設計致します。