子どもたちの安全と健やかな成長を支える保育園は、その多くが築年数十年を超え、老朽化の課題に直面しています。
建物の劣化を放置すれば、安全性の低下や運営への支障など、さまざまな問題を引き起こすでしょう。
この記事では、保育園の老朽化によって起こりうる問題点を解説するとともに、長寿命化改修や建て替えを検討すべきタイミングについて詳しく紹介します。
保育園の老朽化による問題点

保育園の園舎や設備は、長年使用されることで徐々に劣化が進みます。
老朽化を放置すると、安全性や衛生面に悪影響を及ぼすだけでなく、保護者や地域からの信頼低下にもつながりかねません。
ここでは、保育園の老朽化によって具体的にどのような問題が発生するのか、項目別に解説します。
建物の耐震性や安全性の低下
保育園の園舎は、築年数が経過するにつれて、地震への耐性が弱くなる恐れがあります。特に1981年以前に建てられた「旧耐震基準」の建物は、現行の基準を満たしていない場合が多く、耐震診断や補強工事を行っていないまま使用されているケースも少なくありません。
未就学児という特に配慮が必要な子どもたちが集まる保育園は、地震対策をはじめ、万が一の災害時に被害を最小限に抑える対策が必要です。
また老朽化した建物では、壁や天井材の落下、ガラスの飛散、出入口の変形による避難困難など、二次災害のリスクが高まってしまいます。
日常的な使用においても、床や階段の劣化によって転倒・ケガのリスクが増すため、定期的な安全点検を行うのはもちろん、改修・改築を検討する必要があるでしょう。
設備の劣化による衛生環境の悪化
保育園の老朽化が進むと、給排水設備やトイレ、手洗い場といった衛生設備にも不具合が生じやすくなります。
配管の腐食や詰まりによって水漏れや悪臭が発生したり、温水機能が使えず手洗いや掃除に支障をきたすなど、日々の保育に影響が出る可能性もあるでしょう。
床や壁のカビ、湿気による腐敗なども、子どもたちや職員の健康に悪影響を及ぼします。
特に、乳幼児が使用する保育室において、衛生環境の悪化は感染症のリスクを高める重大な問題といえるでしょう。
保護者からの信頼を維持するためにも、目に見えにくい設備部分を含めた定期的な点検と、修繕・設備交換の対応が求められます。
空調・照明の不具合による快適性の低下
老朽化した保育園では、空調や照明設備にも不具合が起きやすくなります。
冷暖房の効きが悪い、電源の入り切りが不安定、照明のちらつきや暗さといった問題は、子どもたちにとって大きなストレスとなるでしょう。
室温の管理が適切にできない環境では、熱中症や風邪など体調不良を引き起こす可能性があり、保育士の対応負担も増加します。
エネルギー効率の低い古い機器を使い続けることで、光熱費が高騰する点も無視できません。
また、照明が不十分な保育室では、視力の発達を妨げたり、集中力の低下につながる恐れがあります。
快適で安心できる保育環境を維持するためには、空調・照明機器の定期的な点検と、省エネ性能を備えた設備への交換も検討が必要です。
バリアフリー対応の不十分さ
老朽化した保育園の多くは、バリアフリーの概念が十分に取り入れられていないケースが多く見られます。
近年では多様な家庭や子どもの特性に対応するために、誰もが使いやすいユニバーサルデザインが求められていますが、古い建物ではそれに対応しきれないのが実情です。
スロープのない玄関や、狭い廊下や階段、段差の多い室内などは、身体の不自由な子どもや保護者、高齢の祖父母などにとって大きな障害となるでしょう。
ベビーカーの使用が難しい園内構造では、送り迎えの負担が増すだけでなく、安全性にも不安が残ります。
改修・改築時には、エレベーターや手すりの設置、段差解消などを検討し、誰もが安心して利用できる環境づくりが必要です。
保護者や地域からの信頼の低下
保育園の老朽化が目立つようになると、「この園で本当に安全に預けられるのか」と保護者の不安が高まります。
外壁のひび割れや塗装の剥がれ、設備の不具合などが放置されていると、「管理が行き届いていない」「対応が遅れている」といった印象を与えかねません。
また、保育園は地域の防災拠点としての役割を担うケースが多いです。
耐震性や衛生面の不備は、地域住民からの信頼低下につながり、入園希望者が減少するなど、施設運営にも影響が出る恐れがあります。
計画的な改修や環境整備を進めることで、保護者や地域からも「信頼できる施設」として高い評価を受けられるでしょう。
保育園における長寿命化改修とは?
長寿命化改修とは、保育園施設の安全性や快適性の維持・向上を目的として、老朽化した建物や設備の一部を補修・更新する取り組みです。
外壁や屋根の補修、トイレや空調設備の入れ替え、耐震補強などが主な内容で、建て替えに比べて費用を抑えながら園の環境を改善できます。
子どもたちの安全を守り、保育の質を保つうえで重要な施策ですが、長寿命化改修には計画的な対応が求められます。
特に、築30年以上が経過した施設では、日常的な修繕だけでは対応が難しく、施設全体の機能を見直した改修・改築が必要になるでしょう。
国や自治体では、保育施設の老朽化対策として補助制度を設けている場合もあるため、ぜひ一度相談してはいかがでしょうか。
将来の大規模修繕や建て替えを見据え、長期的な視点での改修計画を立てることが、安定した保育運営につながります。
改修と改築の違い
「改修」と「改築」は似たような言葉に見えますが、その意味と目的には明確な違いがあります。
改修とは、既存の建物の構造を維持しながら、傷んだ部分を補修したり、設備を更新することです。
具体的には、老朽化した屋根や壁の補修、トイレの水回り設備の入れ替え、空調設備の更新、バリアフリー対応などが該当します。
一方で、保育園の「改築」とは、既存の建物を取り壊し、新たに同規模の建物を建て直すことを意味します。建築基準法上の厳密な定義はありますが、一般的な認識下で
構造上の制約が多く、改修では対応しきれない場合や、建物の基礎部分から見直す必要がある場合に選択されるケースが多いです。
大きな費用と期間がかかるものの、施設全体を新しく設計し直せるため、最新の保育ニーズや法令に即した園舎づくりができます。
改修と改築のどちらを選ぶべきかは、建物の劣化状況、耐震性、今後の運営方針、予算などを踏まえて判断することが重要です。
保育園の長寿命化改修・改築のデメリットや注意点

長寿命化改修や改築は、保育園を安全かつ快適に保ち続けるために重要な取り組みです。
しかし、実施にあたっては一定のデメリットや事前に検討すべき注意点も存在します。
ここでは、改修・改築の際に直面しやすい課題やリスクについて、具体的に解説します。
工事期間中の保育環境への影響
改修や改築を行う際、工事期間中も保育園の運営を継続するケースが多いです。
そのため、工事による騒音や粉塵、通行規制などが、園児や職員の生活に影響を及ぼす可能性があります。
特に幼い子どもたちは大きな音や慣れない環境に敏感です。
また、安全確保の観点から、仮囲いや立入禁止区域の設置、保育動線の見直しなども必要になるでしょう。
場合によっては一時的に仮園舎へ移転する必要もあり、子どもや保護者への心理的・物理的負担が大きくなることも懸念されます。
費用負担と予算オーバーのリスク
長寿命化改修や改築には多額の費用がかかります。
補助金を活用しても自己負担が必要となる場合が多く、予算に余裕がない施設では実施が難航することもあります。
さらに、工事中に想定外の補修が必要になったり、資材価格の高騰、工期の延長などにより、当初の見積もりを超えて費用が膨らむ可能性もあるでしょう。
特に近年では法改正もあった事から、アスベスト関係の調査・対応工事をかなりしっかり行う必要性が生じています。アスベストは業界内でもまだ認識が広まりきっておらず、その健康被害に対してかなり甘く考えられてしまうケースが多い状況で、実際に工事を行う際に、想定していた予算より大きく費用が掛かってしまう場合がほとんどです。
慎重な資金計画とリスク管理を意識したうえで、事前に複数の業者から見積もりを取り、内容や保証範囲を十分に比較検討することが重要です。
補助金の申請手続きや条件が複雑
国や自治体からの補助金は非常にありがたい制度ですが、その申請手続きや交付条件は煩雑で手間がかかることがあります。
例えば、申請には事前の計画書提出、設計内容の適合確認、事業報告などの複数の書類作成が必要です。
また、補助対象となる改修内容が限定されている場合や、申請時期・予算枠に制限があるため、希望通りの支援が受けられない可能性もあります。
手続きの煩雑さからタイミングを逃すケースもあるため、自治体や建築士と早めに連携し、情報収集を行うことが重要です。
保護者や地域への丁寧な説明が必要
改修や改築は園児・保護者・地域住民にとっても大きな関心事です。
保護者には、工事のスケジュールや安全対策、騒音・送迎への影響などについて具体的に説明し、納得を得ることが求められます。
また、地域に対しても、騒音や車両通行などの影響を説明し、理解と協力を得る姿勢が重要です。
このような対応が不十分なまま工事を始めると、不信感を招き、信頼を損なう可能性があります。
工事による影響や不安を軽減するためにも、事前に丁寧な説明と情報共有を行いましょう。
将来の保育需要とのミスマッチ
大規模な改修や建て替えは、将来の保育ニーズを見据えた計画が重要です。
近年では、地域によっては少子化により園児数が減少傾向にある一方、都市部では待機児童が依然として多い地域もあります。
現在の園児数や運営状況だけに基づいて施設を拡張・更新すると、将来的に施設の過剰投資や定員割れを招くリスクがあるでしょう。
逆に、今後の需要増を見越しておらず、改修後すぐに手狭になるようなケースもあります。
地域の人口動態や行政の方針をしっかりと把握し、長期的な視野で計画を立てることが大切です。
保育園の老朽化による改修・改築はサイプラスにご相談ください
保育園の老朽化は、子どもたちの安全性や快適性、保護者の信頼に直結する重要な課題です。
サイプラスでは、保育施設の特性を踏まえた長寿命化改修や改築の提案を行い、計画立案から補助金申請のサポート、施工業者選定補助まで一貫して対応しています。
経験豊富な専門スタッフが丁寧に対応いたしますので、「どこから手をつければよいか分からない」とお悩みの方も、まずはお気軽にご相談ください。

