
保育園の開業を目指すには、立地選びや施設の整備だけでなく、行政手続きや人材確保、資金計画など多くの準備が求められます。
特に認可保育園の場合は、厳格な設置基準を満たす必要があり、スケジュール管理や事前相談も重要です。
この記事では、保育園を開業するために必要な準備と開業までの流れ、保育園経営にかかる費用の目安を分かりやすく解説します。
保育園を開業するまでの流れ

保育園を開業するには、複数の手続きについて、順を追って進める必要があります。
特に、認可保育園を目指す場合は、自治体の募集要項や審査基準を確認し、スケジュールに余裕を持って準備を進めることが大切です。
まずは、保育園を開業するまでの基本的な流れと準備のポイントを紹介します。
保育園の種類(認可・認可外)を決める
保育園を開業する最初のステップは、「認可保育園」か「認可外保育園(無認可保育園)」のどちらにするかを決めることです。
認可保育園は自治体が定めた設置基準(面積、職員配置、安全基準など)を満たし、自治体の認可を受けて運営します。
運営費の一部が公的に補助されるため安定した収益が見込めますが、開業までの手続きが煩雑で、申請から開園まで1年以上かかるケースも少なくありません。
一方、認可外保育園は比較的自由度が高く、少人数制や独自の教育方針を打ち出しやすいのが特徴です。
認可を受けない分、開設までのスピードは早いですが、公的な補助は少なく、保護者からの保育料収入が主な収益源となります。
開業目的や運営スタイル、地域のニーズを踏まえて、どちらの形態が自分のビジョンに合うかを慎重に検討しましょう。
関連記事:認可保育所の設置基準とは?小規模事業や認可外保育園との違いをわかりやすく解説
保育園施設の設計事務所を決める
保育園の開業において、設計事務所の選定は非常に重要なステップです。
園児が安全に過ごせるだけでなく、保育士が働きやすい動線や空間設計、保護者が安心して子どもを預けられる環境づくりを実現するためにも、保育施設の設計経験が豊富な設計事務所を選びましょう。
設計事務所を選ぶ際は、単に建築デザインだけでなく、施工会社の選定体制や、補助金・助成金申請をサポートしてくれるかどうかも確認しておくと安心です。
最近では「木の温もりを生かした園舎」「自然光を取り入れた設計」「防犯カメラや見守りシステムを導入した安全設計」など、園の特色を生かしたデザインを提案する事務所も増えています。
関連記事:保育園・幼稚園・認定こども園の園舎デザインで大事なポイント・アイデアの事例を解説
設置基準を満たした園舎・園庭を設計する
保育園の施設は、子どもの安全と成長を第一に考えた環境でなければなりません。
特に認可保育園の場合、児童福祉法に基づいた「設置基準」を満たすことが求められます。
例えば、0~1歳児を入所させる場合は乳児室(1人あたり1.65㎡以上)またはほふく室(1人あたり3.3㎡以上)、2歳以上児には保育室(1人あたり1.98㎡以上)が必要です。
園庭の確保も重要で、屋外で十分に遊べるスペースが求められます。
園舎の設計では、子どもたちの安全を守るための「転倒防止」「滑りにくい床材」「角の丸い家具」などの配慮も必須です。
防災面では、避難口や防火設備の配置、耐震性の確保なども審査対象となります。
また、最近では、保育士の働きやすさを考えた設計にも注目が集まっています。
見通しのよい保育室の配置、調理室や事務室との距離の最適化、冷暖房効率を考慮したレイアウトなど、日々の業務負担を軽減できる設計も重要です。
関連記事:保育園設計の基本的な考え方は?気をつけたい注意点も紹介
事業計画書・提案書を自治体に提出する
設計がある程度まとまったら、次に行うのが「事業計画書」と「提案書」の作成です。
これらは自治体が保育園の設立を認可するかどうかを判断する重要な資料であり、開業準備の中でももっとも時間を要する工程です。
事業計画書には、園の運営方針、保育理念、職員体制、収支計画、資金調達方法、想定利用者数などを明記します。
特に、収支計画の部分は現実的かつ持続可能な内容で作成しましょう。
提案書では、地域の保育ニーズにどのように応えるのか、独自の保育方針や教育プログラムをどのように提供するのかを具体的に示すことが求められます。
自治体によっては、認可保育園の公募(募集要項)に応募する形式をとっており、期限が厳密に設定されています。
書類不備や提出遅延があると審査対象から外されるため、スケジュール管理を徹底しましょう。
補助金・助成金を申請する
保育園の開業には、多額の初期費用がかかります。
不動産取得費・内装費・備品費・広告宣伝費などを合わせると、数百万円以上の資金が必要になるでしょう。
そのため、自治体や国の補助金・助成金を積極的に活用することが大切です。
代表的な支援制度としては「就学前教育・保育施設整備交付金」や「保育対策総合支援事業費補助金」などがあり、建築費や改修費の一部を補助してもらえる場合があります。
自治体独自の支援制度として、土地取得費の補助、賃料補助、人件費助成などを設けているケースもあるため、事前に相談するのがおすすめです。
補助金を申請する際は、募集時期・対象要件・提出書類をしっかり確認し、必要に応じて設計事務所や行政書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
関連記事:保育園が利用できる補助金・助成金一覧!【令和6年(2024年)最新版】
建築工事を開始する
事業計画や設計が確定し、自治体との協議が整ったら、いよいよ建築工事の着工に進みます。
保育園は子どもの命を預かる施設であるため、安全性・耐震性・防火性能などの基準を厳格に満たす必要があります。
工事を担当する施工会社は、保育施設や福祉施設の施工実績がある業者を選ぶようにしましょう。
着工後は、定期的に現場確認を行い、設計通りに進行しているかをチェックします。
特に、避難経路の確保や照明・空調設備の配置、バリアフリー設計などは後から修正が難しいため、初期段階でしっかり確認しておくと安心です。
内装や家具・遊具の選定は、園のコンセプトに合わせた空間づくりを意識しましょう。
木材を多く使用した温かみのある園舎や、自然光を取り入れた開放的なデザインが人気です。
保育士・スタッフを採用する
施設の完成が近づいたら、運営に必要な人員の採用を進めます。
求人媒体やハローワーク、保育士専門サイトを活用するほか、地域の保育士養成校への求人案内も効果的です。
近年は「子育て中の保育士の復職支援」や「短時間勤務制度」を導入する園も増えており、柔軟な働き方を提示することで優秀な人材を確保しやすくなります。
保育園の運営には、保育士・園長・栄養士・調理員・事務職員など、多様な職種が必要です。資格保有者だけでなく、保育理念に共感し、チームワークを重視できる人材を選びましょう。
開園直後は慣れない業務が多いため、職員研修を事前に実施して、保育方針や安全マニュアル、緊急時対応などを共有しておくとスムーズに運営を始められます。
自治体の審査通過後、開園へ
建物の完成とスタッフの配置が整ったら、自治体による最終審査(立入検査)を受けます。
審査では、建築基準法や消防法に基づく安全確認、設置基準の遵守状況、設備・職員体制のチェックなどが行われるでしょう。
問題がなければ「認可証」または「開設許可証」が交付され、正式に開園が認められます。
開園後は、地域住民や保護者への説明会を開くなど、信頼関係の構築が大切です。
初年度は運営体制の安定化が課題となるため、職員間のコミュニケーションを密にし、改善点を共有しながら運営を軌道に乗せていきましょう。
開園のタイミングに合わせてホームページやSNSを開設し、園の特色や教育方針、イベント情報を発信することも効果的です。
地域に根ざした保育園としての存在感を高め、保護者から選ばれる園づくりを目指しましょう。
保育園の経営にかかる費用の目安

保育園の開業・経営には、土地や建物の準備費用だけでなく、運営を安定させるための人件費や設備維持費など、多くのコストが発生します。
どのようなタイプの保育園を開くかによって金額は大きく異なりますが、あらかじめ全体の資金計画を立てておくことが重要です。
続いては、保育園経営にかかる主な費用の内訳と相場を紹介します。
初期費用
保育園を新たに開設する際には、物件の取得や改修、設備の導入、スタッフ採用など、多岐にわたる初期投資が必要です。
特に認可保育園の場合、建物や設備が自治体の定める設置基準を満たす必要があるため、費用が高額になりやすい傾向にあります。
以下の表は、園児20~30人規模(延床面積20~30坪)を想定した場合のおおよその初期費用です。
| 費用項目 | 内容 | 目安 |
| 物件取得費 | 賃貸契約・保証金など | 150~300万円 |
| 内装工事費 | 壁・床・トイレ・調理室の改修など | 150~300万円 |
| 設備費 | 机・椅子、冷暖房、厨房設備など | 150~300万円 |
| 備品費 | 遊具・寝具・消耗品など | 100~150万円 |
| 採用広告費 | スタッフ募集にかかる費用 | 50~100万円 |
| 広告宣伝費 | 開園告知にかかる費用 | 50~100万円 |
| 合計 | 650~1,250万円 |
※延床面積20~30坪(園児20~30人)/賃貸物件の場合
初期費用は物件の形態(新築・賃貸)によって大きく変動します。
特に、新築する場合は開業計画を立てる段階で、補助金・助成制度の情報を早めに確認しておくとよいでしょう。
ランニングコスト
保育園の運営が始まると、毎月発生する人件費や光熱費、食材費などのランニングコストを継続的に支払う必要があります。
これらの費用を事前に把握し、年間予算を立てておくことで、安定した経営を維持しやすくなります。
| 費用項目 | 内容 | 目安 |
| 賃貸料 | 建物の賃借料・共益費など | 45~60万円 |
| 人件費 | 保育士・調理員・事務員などの給与 | 150~200万円 |
| 水道光熱費 | 電気・ガス・水道などの設備利用費 | 5~15万円 |
| 給食費 | 食材購入費・調理費 | 10~15万円 |
| 合計 | 210~290万円 |
※延床面積20~30坪(園児20~30人)/賃貸物件の場合
ランニングコストは、園児数やスタッフ配置、立地条件によっても変動します。
認可保育園であれば国や自治体から運営費補助が支給されるため、安定した経営を行いやすいでしょう。
認可外保育園の場合は収入が保育料に依存するため、地域ニーズを的確に把握し、定員を安定して維持する工夫が必要です。
経費の内訳を定期的に見直し、効率的な運営体制を整えることが、長期的な経営の安定につながります。
保育園を経営するメリット・デメリット

保育園の経営は、子どもたちの成長を支えながら地域社会に貢献できる、やりがいの大きい事業です。
一方で、初期投資の負担や人材確保の難しさ、法令遵守の複雑さなど、リスクも少なくありません。
ここでは、保育園経営の主なメリットとデメリットを整理し、開業前に知っておきたいポイントを解説します。
保育園経営のメリット
■安定した需要が見込める
■国や自治体の補助金・助成金を活用できる
■社会貢献度が高い
■独自の保育方針を実現できる
共働き世帯の増加により、保育園の需要は都市部を中心に依然として高く、待機児童問題が完全には解消されていません。
そのため、長期的に安定した経営が見込めるのが大きな強みです。
また、地域に密着した保育を通して、子育て世帯の支援や地域活性化に貢献できるのもやりがいの一つです。
自分の保育理念や教育方針を反映した園づくりができるため、理想の保育環境を形にしたいと考える方にとっては非常に魅力的な事業といえます。
保育園経営のデメリット
■初期費用や運転資金が高額
■人材確保や定着が難しい
■行政手続きや法令遵守が複雑
■経営が地域ニーズに左右されやすい
保育園の開業には、建設・改修費や備品費など数百万円以上の初期投資が必要です。
運営開始後も人件費や設備維持費などの固定費を支払い続ける必要があります。
地域によっては少子化の影響で定員割れのリスクもあるため、開業前に入念な市場調査と事業計画の策定を行いましょう。
また、全国的に保育士不足が続いており、採用難・離職リスクが経営上の大きな課題となっています。
働きやすい職場づくりや給与水準の見直しなど、人材定着の工夫も重要です。
保育園の経営をお考えならサイプラス(SAI+)にご相談ください
保育園の開業・経営を成功させるためには、立地や建物の選定から設計、補助金申請、行政との調整まで、多くの専門知識と経験が求められます。
サイプラス(SAI+)では、保育園や認定こども園の設計・監理を数多く手がけてきた実績を活かし、企画段階から開園後の運営サポートまでを一貫して行っています。
地域のニーズに合った園づくりや、設置基準を満たす効率的な設計、保育士が働きやすい動線計画など、現場に寄り添った提案が可能です。
「どこから始めればよいかわからない」「開園までのスケジュールを相談したい」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

