
保育園の園舎は、子どもたちが1日の多くを過ごす場所です。安心・安全であることはもちろん、成長や学びをサポートする空間であることが求められます。
園舎設計にあたっては、子どもたちの過ごしやすさや保育者の動線の効率にも着目した「間取り」の工夫が非常に重要です。
この記事では、保育園の間取り設計で重視すべき5つのポイントを解説するとともに、独自性のある工夫が光る設計事例を3つ紹介します。
保育園の間取りで重視すべき5つのポイント

まずは、保育園の間取り設計において重視すべき5つのポイントを紹介します。
安全性の確保
保育園の園舎設計において、まず優先すべきは「安全性」です。
子どもたちは予測できない動きをすることも多く、ちょっとした段差や死角でも思わぬ事故につながるリスクがあります。
そのため、動線はできる限りシンプルに設計し、園児同士の衝突や転倒などのトラブルを防ぐレイアウトを採用することが大切です。
例えば、園庭への出入り口を広く設けることで、移動時の混雑によるぶつかり合いを防ぎやすくなります。
また、階段の昇降が難しい1〜2歳児クラスは1階に配置し、転落や転倒のリスクを回避するといった配慮も重要です。
視認性の確保
園児の安全を見守り、スムーズな保育を行うためには、園内全体の「見渡しやすさ」にも注目すべきです。
視認性の高い設計は、保育者に心理的なゆとりを与え、保育の質を高めることにもつながります。
保育士の人数が限られているケースも想定し、死角の少ない空間構成を心がけることが大切です。
例えば、中庭を中心に保育室を配置したレイアウトや、ガラスの仕切りを活用した見通しの良い構造であれば、園内のどこからでも子どもの様子を把握しやすくなります。
用途に合ったゾーニング
保育園では、1日の中でさまざまな活動が行われます。
そのため、それぞれの活動に適した空間を用意し、明確にゾーニングすることが重要です。
例えば、活発に身体を動かす遊びのスペースと、昼寝や読書など静かに過ごす空間は、距離を取って配置することで、互いの活動に干渉せずに集中できます。
音や光をコントロールできるような物理的な仕切りも有効です。
また、職員専用のエリア(事務室やスタッフルーム)と、園児・保護者が利用するスペースを明確に分けることで、業務効率や職員のプライバシー保護にもつながります。
このようなゾーニングは、園全体の運営効率を高めるためにも非常に重要な視点です。
園庭やテラスとのつながり
室内から園庭やテラスへスムーズに移動できる間取りにすることで、子どもたちが自然とふれあいやすくなります。
保育中の活動が自然に広がり、遊びの自由度も高まるでしょう。
特に、晴れた日は屋外活動がすぐに取り入れられるため、柔軟な保育計画の運用にも貢献します。
また、建物全体に中庭やテラスを設けることで、園内のどこにいても自然光が届く、明るく開放的な雰囲気が演出できるのもメリットです。
可変性や拡張性の確保
保育園では、園児数の増減やクラス編成の見直しなどで、年ごとに状況が変化することも少なくありません。
そのため、園舎には年ごとの変化に柔軟に対応できる「可変性」や「拡張性」を備えておくことが大切です。
例えば、可動式の間仕切りを導入することで、1つの広い保育室を複数の小部屋に区切ったり、必要に応じて広く使ったりと、柔軟な空間調整が可能になります。
また、収納棚やロッカーも移動できる仕様にしておくと、家具の位置を変えるだけで保育室の構成を簡単に見直せるようになり、非常に便利です。
設計時からこのような将来の変化を見越しておくことが、長く快適に使える園舎設計のポイントになります。

間取りに工夫した保育園の設計事例3つ
続いては、私たちサイプラス(SAI+)が手がけた、間取りに工夫した保育園の設計事例を3つ紹介します。
【既存棟+増築棟】あーす保育園 中央林間

●広めの玄関・保育室を一体利用できるホール空間
●中央の廊下を介したゾーニング
●キッチンの様子がわかる大きな窓
●保育室は可変&シンプル設計
●幼児トイレは身支度しやすい動線&鮮やかな配色





「あーす保育園中央林間」の園舎は、6階建て共同住宅の1階部分と、その隣に新設された平屋建ての増築棟を組み合わせ、一体的に運用する設計を取り入れています。
2棟をつなぐことで、機能性と快適さを兼ね備えた空間を実現しました。
玄関や廊下には十分な広さが確保されており、単なる通路にとどまらず、子どもたちが自由に絵を描ける黒板スペースや、保護者へのお知らせを掲示する情報スペースとしても活用されています。
また、廊下の長さを活かし各所にポイントの場所を配置し、保育士が見守りやすい構造を採用するなど、安全面への配慮が感じられる設計です。
保育室はシンプルなデザインを基調とし、可動式の仕切りで空間を柔軟に変化できる設計になっています。
家庭のように落ち着いて過ごせる雰囲気を大切にし、子どもたちが安心できる環境を整えた園舎です。
【園庭とつながる園舎】スクルドエンジェル保育園もくし園

●明るく一体性のある玄関ホール
●園庭とつながるホール・保育室
●保育室の配置と用途ゾーン分け
●回遊性と視認性の確保
●可愛らしく使いやすいトイレ





「スクルドエンジェル保育園もくし園」の木造2階建て園舎は、自然光と調和し、温かみのある空間が広がる設計です。
玄関ホールは明るく開放感があり、保育室や園庭へと自然につながる構造で、登降園や日々の活動もスムーズに行えるでしょう。
保育室は、遊び・休息・食事など用途ごとにゾーン分けされ、活動の切り替えがしやすい環境が整っています。
園舎内は回遊性が高く、子どもたちは自由に動き回れるほか、見通しが良いため視認性に優れ、安全面にも配慮された設計です。
子どもたちがのびのびと過ごせる空間と、保育士が働きやすい環境を両立した園舎を実現しました。
【吹抜けのアーケード】認定こども園 釜井台幼稚園

●園舎全体が循環する回遊動線
●視認性の高い開放的な設計
●自然光を取り込む明るい空間
●柔軟なゾーニングが可能
●安心して過ごせる子どもたちの居場所


保育園ではありませんが、「認定こども園 釜井台幼稚園」の園舎は、天井が高く自然光がたっぷりと差し込む光のアーケード(吹抜けアトリウム)を中心に、保育室やランチルームが回遊動線上に配置された間取りです。
子どもたちは自由に歩き回ることができ、視認性も高いため、保育士の見守りがしやすく、安全性にも優れています。
各保育室は柔軟なゾーニングが可能で、活動内容や年齢に合わせて空間を使い分けられるのも魅力です。
園舎内には収納を兼ねた隠しスペースや、寝転んで本を読める絵本コーナーなど、子どもたちが思い思いに過ごせる特別な場所も用意されています。
子どもたちが安心できる居場所を確保しながら、多様な保育ニーズにも対応できる園舎になりました。
保育園の間取り設計はサイプラス(SAI+)にご相談ください
保育園の園舎設計では、安全性や視認性の確保、ゾーニングや可変性などを意識した間取りが求められます。
子どもたちが安心して過ごせる環境を整えることはもちろん、保育者の動線や運営効率にも配慮した設計が必要です。
私たちサイプラス(SAI+)は、幼稚園や保育園、そして認定こども園の設計を専門に手がける建築設計事務所です。
子どもたちの安全性や保育者の方々の働きやすさを考慮した園舎・園庭の設計について、豊富な経験を活かし、最適なご提案をいたします。
園舎の設計やリフォームをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

