保育園の遊戯室の設計基準・空間デザインのポイントは?
保育園・幼保連携型認定こども園は、建築基準法上の「児童福祉施設等」に分類されます。
また、幼稚園は「学校」に分類されます。
そのため、保育園・幼稚園・幼保連携型認定こども園の遊戯室を設計する際は、
それぞれの設計基準を遵守しなければなりません。
また、子どもたちが安心して楽しく過ごせる遊戯室を作るには、空間デザインも大事な要素です。
この記事では、保育園・幼稚園・幼保連携型認定こども園の遊戯室における設計基準、
空間デザインの具体的なポイントについて紹介します。
保育園の遊戯室の設計基準
保育園の遊戯室を設計する際は、建築基準法の定める設計基準を満たす必要があります。
どんな基準があるのか、具体的に見ていきましょう。
大きさ・面積
保育園の遊戯室の大きさ・面積については、以下のように定められています。
■遊戯室(または保育室):1.98㎡/人(2歳児以上)
■屋外遊技場:3.3㎡/人(2歳児以上)※近隣公園利用の場合公園の面積
屋内の遊戯室の場合、園児1人あたり最低でも1.98 ㎡の面積が必要です。
つまり、園児20人の保育園なら、遊戯室は39.6㎡以上の大きさがなければなりません。
ただし、保育園の場合、遊戯室は保育室と兼ねて良い事になっていますので、実際は
保育室兼遊戯室として使う事がほとんどです。
天井の高さ
保育園の遊戯室における天井の高さについては、建築基準法において「2.1m以上でなければならない」と定められています。
しかし、実際には天井から50㎝の垂れ壁が必要な保育園も多く、天井高は最低でも2.4m以上あったほうが良いでしょう。
保育園の天井高については、以下の記事でも詳しく解説しています。
保育園・幼稚園・こども園の天井高はどれくらい必要?建築基準法の規定や平均について
幼稚園の遊戯室の設計基準
また、幼稚園の遊戯室の設計基準を具体的に見ていきましょう。
大きさ・面積
幼稚園の遊戯室の大きさ・面積については、保育園と違い、必要な部屋と園舎の面積が学級数によって
以下のように定められています。
■園舎面積(保育室・遊戯室ほか)
1学級:180㎡
2学級:320+100×(学級数-2)㎡ (3学級から1学級毎 100㎡増)
※保育室については1学級35人以下で、1人当たりの面積を定めている場合あり
※遊戯室についても最低面積を定めている場合あり
■屋外遊戯場
2学級以下:330+30×(学級数-1)㎡
3学級以上:400+80×(学級数-3)㎡ (4学級から1学級毎 80㎡増)
上記より、遊戯室の面積は、保育室や必要諸室を確保しながら可能な限りの大きさ、
かつ行政の基準があれば、その面積を確保するという事になります。
神奈川県の場合は保育室であれば1.3㎡/人、遊戯室は90㎡以上と記載されています。
幼稚園や認定こども園の場合、遊戯室を保育室とは別に設ける事が多いでしょう。
採光・照度
保育園・幼稚園・幼保連携型認定こども園の遊戯室においては、採光や照度についても明確な基準があります。
幼稚園・幼保連携型認定こども園については、開口部の採光に有効な部分の面積が床面積の1/5以上必要と定めています。
ただし、一定の照明設備の設置をして照度を確保した場合には、床面積の1/7以上に緩和することができます(S55告示1800号)。
また、照度基準は床面において200ルクス以上が必要と定められています。
200ルクスは家庭のリビングルームと同じくらいなので、みんなで遊びやゲームをするのに適した明るさだと言えます。
一方で、子どもたちが自分で絵本などの読書を楽しむなら、もう少し明るさがあったほうが良いでしょう。
一般的には、読書を楽しむためには500ルクス以上の照度が必要と言われています。
保育園の場合は、開口部の採光に有効な部分の面積は床面積の1/7以上となっています。
いずれの場合も特に注意が必要な事は、建物高さがありなおかつ敷地境界線に近い保育室の場合、
採光補正係数の関係で、窓があっても採光に有効な面積に算入できない場合がある点です。
保育園・幼稚園・認定こども園の遊戯室に求められる空間デザインのポイント
保育園・幼稚園・認定こども園の遊戯室を設計するときは、空間デザインについて意識することも大切です。
続いては、空間デザインの具体的なポイントについて、解説していきます。
子どもたちの安全を見守れる空間
保育園の遊戯室は、子どもたちが安心して安全に遊べる場所でなければなりません。
そこで重視したいのが、見通しの良さです。
保育士さんの設置基準は、3歳児で20人に1人、4歳児以上になると30人に1人です。
20人以上の園児の安全を1人の保育士が見守ることを想定して、遊戯室のどこにいても子どもたちの姿に目が行き届くよう、見通しの良い空間デザインが望ましいでしょう。
のびのびと遊べる遊戯室
保育園の遊戯室は、子どもたちがのびのびと遊べる空間づくりが重要です。
園児の人数に対して十分な広さを設けるのはもちろんですが、思い切り走り回っても転びにくい床材を使用したり、ぶつかっても怪我をしにくいよう壁の角を丸くしたり、工夫する箇所はたくさんあります。
好奇心を掻き立てる遊戯室
保育園の遊戯室には、子どもたちの好奇心をかき立てるような仕掛けも必要です。
例えば、自由に絵本を手にとってベンチで静かに座って読めるコーナーがあったり、隣の部屋を覗くことができる小窓があったり、雨の日も体を思いきり動かして遊べるボルダリングがあったり…
さまざまな工夫で子どもたちの大好きな場所を作り上げていきましょう。
自然光を取り入れた明るい遊戯室
保育園の遊戯室には、できるだけ自然光を取り入れることをおすすめします。
もちろん、照明器具を設置して基準を満たすことも可能ですが、自然光のほうが温かみがあり、子どもたちがのびのびと遊べる空間を演出してくれます。
また、照明でいくら明るくしても、自然光の明るさには敵いません。
園全体の雰囲気を明るくするためにも、遊戯室にはできる限り自然光を取り入れましょう。
自然の空が見える遊戯室なら、「今日は晴れていて雲がないね」「今日は曇っていて雨が降りそうだね」など、子どもたちと天気に関する会話も楽しめます。
天井が高いホール兼遊戯室
設計基準に関して言えば、遊戯室の天井高は2.1m以上あればOKです。
しかし、開放感のある空間を演出したいなら、天井高を高くすることをおすすめします。
遊戯室は、子どもたちの遊び場としてだけでなく、入学式・卒業式やお遊戯会、お誕生日会、生活発表会などの園行事でも使用する場所です。
天井高を高くすることで、大人数を収容しても窮屈になりにくく、ホールとしても活用できます。
保育園の遊戯室の設計・デザインはサイプラス(SAI+)にご相談ください
保育園の遊戯室は、建築基準法における設計基準を満たす必要があります。
また、子どもたちが安心してのびのびと遊べる遊戯室を作り上げるためには、空間デザインの工夫も必要です。
私たちサイプラス(SAI+)は、保育園や幼稚園・認定こども園の園舎を数多く手がけてきた設計事務所です。建築基準法の設計基準を満たす遊戯室の設計をご提案いたします。
また、私たちが手がけてきた園舎には、子どもたちと保育者のそれぞれの視点に立ったさまざまな工夫が施されています。
子どもたちの好奇心を掻き立てる仕掛けを施した遊戯室や、保育者が安心して保育できる園舎など、さまざまな事例がございますので、ぜひ参考にしてみてください。
私たちは、保育者様や園の責任者様とのコミュニケーションを第一に考えています。
お互いに意見を出し合いがなら、理想の遊戯室を形にしていきましょう。