幼稚園・保育園から認定こども園へ移行するメリットは?違いや注意点を解説
2006年に創設された「認定こども園」は、幼稚園と保育所の両方の機能を併せ持った施設です。
近年、従来は幼稚園・保育園として運営していた施設が、認定こども園へ移行するケースが増えています。
この記事では、幼稚園・保育園から認定こども園へ移行するメリットや注意点について、詳しく解説します。
認定こども園とは?
認定こども園とは、幼稚園と保育園の機能を兼ね備えた施設です。
0歳から就学前の子どもを対象としており、利用時間が柔軟で、教育と保育を一体化した取り組みが行われているのが特徴です。
保護者の就労状況に関わらず利用できるため、共働き家庭だけではなく、専業主婦世帯やフリーランスの方など多くの家庭に支持され、近年、認定こども園は注目を集めています。
ここでは、認定こども園の主な特徴を3つ紹介します。
教育と保育の一体化
一般的な幼稚園・保育園の場合、幼稚園では3歳からの教育、保育園では0歳からの保育が重視されています。
一方、認定こども園では、幼稚園の「教育」と保育園の「保育」を一体化して提供し、就学前の子どもの成長に合わせて、どちらも一貫したプログラムが組まれているのが特徴です。
これにより、子どもたちは学びと遊びをバランスよく体験することができます。
就労要件を問わない
認定こども園は保護者の就労状況にかかわらず、専業主婦や育児休業中の家庭(1号認定)でも利用可能です。
これまで、保育園の利用が認められていなかった世帯の子どもたちも通えるため、家庭にとっては選択肢が増えることになります。
利用時間が幅広い
利用時間の幅広さも、認定こども園の特徴の一つです。
保育園のように長時間の利用も可能でありながら、幼稚園と同じように短時間の教育プログラムも用意されています。
保護者の働き方や家庭環境に応じて利用できるうえに、早朝や延長保育などのサービスも提供されていることが多く、利用者の多様なニーズに対応しているのも魅力です。
認定こども園と幼稚園・保育園の違い
認定こども園と幼稚園、保育園には、対象年齢や認定区分、保育時間や保育料、職員の資格などに違いがあります。
| | 認定こども園 | 幼稚園 | 保育園
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|管轄 | 内閣府 | 文部科学省 | 厚生労働省
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|施設の分類 | 幼保連携型 |
| | 幼稚園型 |
| | 保育所型 |
| | 地方裁量型 | 教育施設 | 児童福祉施設
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|対象年齢 | 0歳~就学前 | 3歳~就学前 | 0歳~就学前
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|認定区分 | 1・2・3号認定 | 1号 | 2・3号認定
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|保育時間(標準) | 4~11時間 | 4時間 | 8~11時間
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|保育料無償化(3歳以上)| 対象 |対象(月額上限2.57万円)| 対象
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|保育料 |世帯収入に応じて自治体が決定| 園ごとに決定 |世帯収入に応じて自治体が決定
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|保育料以外にかかる費用| 給食費 | 入園料 | 給食費
| | 入園準備品など |制服・帽子・バッグ | 入園準備品など
| | | 送迎バス代 |
| | | 給食費 |
| | | 入園準備品 など |
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|職員資格 | 保育教諭 | 幼稚園教諭 | 保育士
| | 保育士 |
| | 幼稚園教諭 |
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
|給食 | 義務 | 任意 | 義務
比較表からも分かるとおり、幼稚園と保育園の良さを併せ持つのが認定こども園です。
また、認定こども園では給食が義務化されているため、毎日お弁当を作る保護者の負担が軽減されます。
認定こども園は4つのタイプに分類される
認定こども園には、幼稚園型、保育所型、幼保連携型、地方裁量型の4つの分類があります。
幼保連携型
幼保連携型は、幼稚園と保育園の機能を一体化した単一の施設で、教育と保育の両方を提供します。
文部科学省と厚生労働省の双方から認可を受けており、教育機関としての役割と児童福祉施設としての役割を持ち合わせているのが特徴です。
全国にある認定こども園の中で、最も普及しているのがこのタイプです。
幼稚園と保育園の良いところを融合し、幅広い年齢層の子どもたちを対象としています。
幼稚園型
幼稚園型は、認可幼稚園から認定こども園に移行した施設です。
文部科学省の認可を受けた教育機関であり、幼稚園としての教育方針を維持しつつ、働く保護者にも対応できるようになっています。
3歳以上の園児に重点を置きながらも、保育の必要性が高い家庭にも対応しているのが特徴です。
保育所型
保育所型は、認可保育園から認定こども園に移行した施設です。
厚生労働省からの認可を受け、児童福祉施設としての役割を持ちつつ、幼稚園の機能が追加されています。
特に0歳から2歳児の保育ニーズが高く、保育を必要とする家庭に対して教育面のサポートも提供できるのが特徴です。
地方裁量型
地方裁量型は、認可外の幼稚園・保育園から認定こども園に移行した施設です。
地方自治体が独自の判断で設置され、地域に密着した柔軟な運営により、地域の子育て支援に貢献しています。
幼稚園・保育園から認定こども園へ移行するメリット
幼稚園・保育園から認定こども園に移行すると、以下のようなメリットがあります。
利用者層の拡大
認定こども園は、保護者の就労状況に関わらず、幅広い家庭が利用できる施設です。
専業主婦家庭や共働き家庭を問わず利用できるため、幼稚園だけ・保育園だけの機能を備えている施設よりも利用者層が広がります。
特に、幼稚園から認定こども園に移行すると、これまで対象ではなかった0歳から2歳児の入園が可能になるため、施設の利用率が向上し、収入の安定にもつながるメリットがあります。
補助金(施設型給付費)収入の増加
認定こども園は、国から支給される補助金(施設型給付費)の対象となり、幼稚園や保育園単体よりも多くの給付を受けることが可能です。
補助金の増加により、施設側はより充実した教育・保育を提供できるようになり、施設の運営面での負担軽減も期待できます。
施設の設備だけではなく、保育士・教諭の研修にも資金を使えるため、教育・保育の質の向上につながるでしょう。
経営の安定化
幼稚園・保育園から認定こども園への移行は、利用者層の拡大や補助金の増加により、経営の安定化に寄与します。
実際に、認定こども園の設立数は年々増加しており、平成23年に762園だった施設数は、令和4年に9,220園にまで拡大しています。
参考:内閣府「認定こども園に関する状況について(令和4年4月1日現在)」
地域社会のニーズに応えながら、経営の安定化を図るには、認定こども園への移行が重要な選択肢と言えるでしょう。
幼稚園・保育園から認定こども園へ移行するデメリット
認定こども園への移行には多くのメリットがありますが、同時に注意すべきデメリットや課題も存在します。
移行を検討する際には、これらの点を十分に理解し、事前に対応策を考えておきましょう。
ここからは、幼稚園・保育園から認定こども園に移行するデメリットを紹介します。
施設整備が必要
認定こども園に移行するためには、一定の施設基準をクリアしなければいけません。
例えば、幼稚園が認定こども園として0歳から2歳児を受け入れるためには、乳児室やほふく室といった専用施設の設置が必要です。
また、屋外遊技場を近隣の公園などで代替している保育園の場合、認定こども園に移行するには、専用の園庭が必要となるでしょう。
このように、幼稚園・こども園から認定こども園への移行には、施設条件を満たすための改装工事や設置工事が必要となり、多額の費用が発生します。
移行に伴う資金計画やスケジュール管理は、解決しなければならない重要な課題と言えるでしょう。
職員の増員が必要
幼稚園と保育園の両方の機能を持つ認定こども園では、施設基準に則った職員の確保が求められます。
幼稚園型の施設であっても保育士資格の有資格者が、保育所型の施設であっても幼稚園教諭の有資格者の配置が望ましいとされており、新規雇用が必要になる可能性もあるでしょう。
職員の確保や育成には時間とコストがかかりますが、保育士や教諭の人員配置が適切に行われなければ認定が取り消されるリスクもあるため、安定した人員確保と職員の資格管理が重要です。
幼稚園・保育園から認定こども園への移行、施設整備はサイプラス(SAI+)にご相談ください
幼稚園・保育園の両方の役割を持つ認定こども園は、保護者の就労状況にかかわらず利用できるため、利用者層の拡大や経営の安定化につながる大きなメリットがあります。
しかし、移行の過程では、施設や職員に関する厳しい基準をクリアする必要があるため、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることをおすすめします。
私たちサイプラス(SAI+)は、幼稚園や保育園、そして認定こども園の設計を専門に行っている建築設計事務所です。
認定こども園への移行に伴う園舎や園庭の設計、改修工事のサポートなど、豊富な経験を活かして最適なご提案をいたします。
認定こども園への移行を検討されている幼稚園・保育園の方は、ぜひお気軽にご相談ください。