【最新版】保育所保育指針とは?5領域や10の姿、改定のポイントを分かりやすく解説
保育所保育指針は、保育所における保育の質を高めるための重要なガイドラインです。
最新の改定では、子どもの発達や成長を支えるための「5領域」と「10の姿」が示されています。
この記事では、保育所保育指針の基本的な概念や、5領域と10の姿、改定のポイントを分かりやすく解説します。
保育所保育指針とは
保育所保育指針とは、保育の基本となる考え方や保育内容、保育所運営に関する事項が定められたものです。
保育内容は、各保育所の独自性や創意工夫が尊重されるものですが、すべての子どもの最善の利益を目的として、一定の保育水準を確保することが求められます。
厚生労働省が制定した保育所保育指針は、保育の質を維持し、高めるためのガイドラインとして、保育園の経営者はもちろん、現場で子どもたちと関わる保育士も理解しておく必要があります。
保育所保育指針が示す「5領域」
保育所保育指針が示す5領域とは、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」のことを指します。
これは、小学生になるまでに育てておきたい基礎力をあらわしたもので、子どもの心身の発達をサポートするために必要なことが整理されています。
5領域には、それぞれ以下のようなねらいがあります。
領域: ねらい
健康: 健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う
人間関係: 他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人とかかわる力を養う
環境: 周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う
言葉: 経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う
表現: 感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする
<出典>厚生労働省「保育所保育指針について」
保育士などの保育者には、保育所保育指針が示す5領域のうち、どれか一つを集中的に指導するのではなく、総合的に組み合わせながら子どもたちの成長をサポートすることが求められます。
保育所保育指針が示す「10の姿」
保育所保育指針が示す「10の姿」は、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を示したものです。
小学校入学前までに育みたい資質や能力が示されていて、前述した5つの領域に基づいて保育を行うことで、10の姿が見られるようになると言われています。
具体的には、以下の通りです。
<10の姿 目指す姿>
■健康な心と体
・全身を使ってさまざまな遊びに取り組み、目標をやり遂げようとする
・何が危険かを理解し、安全な行動をとれる
・手洗いや着脱、排泄などの生活習慣を身につける
■自立心
・身近なもので創意工夫して遊び、自分で試行錯誤しながら物事を最後までやり遂げる
・やらなければいけないことを理解し、困ったときは周りに助けを求めながら、自ら解決しようと取り組む
■協同性
・友達と考えたり工夫したりして、同じ目標に向かって取り組める
・友達と互いの想いや考えを共有し、集団の一員であることに充実感を得る
■道徳性・規範意識の芽生え
・人との関わりの中で、してよいことと悪いことの区別がつくようになる
・自分の行動を振り返ったり、友達に共感したりすることで、相手への思いやりの気持ちを持てる
■社会生活との関わり
・行事や課外活動を通して、周囲の人と接することで、地域に親しみを持てる
・周囲の役に立つ喜びを覚え、家族や友達、地域の人など社会とのつながりを大切にする
■思考力の芽生え
・物の性質や仕組みについて考えたり、予想したりして、多様な遊びを楽しめる
・友達と接する中で、自分と異なる考えがあることを知り、自分なりに考えて行動できるようになる
■自然との関わり・生命尊重
・自然の中で遊びながら好奇心や探求心を持ち、四季の変化や事象などを感じ取って、周りと共有しようとする
・身近な生き物や植物の世話を通して命を意識し、愛着を持って接するようになる
■数量や図形、標識や文字などへの関心
・感覚 ・ルールのある遊びなどを通して、数字や文字と親しみ、興味関心を持って使おうとする
・標識や文字に興味を抱き、必要性や役割を知ろうとする
■言葉による伝え合い
・絵本や物語などを通して、新しい言葉や豊かな表現を身につける
・保育士や友達と会話をする中で、自分の考えや感じたことを伝えあうことを楽しめる
■豊かな感性と表現
・感性や表現心を動かすような出来事や身の回りのものに触れて、自分なりにイメージを膨らませたり、自由に表現したりする
<参考>厚生労働省「保育所保育指針(◆平成29年03月31日厚生労働省告示第117号)」
保育所保育指針の改定はいつ?
保育所保育指針は、1965年に厚生労働省に制定され、1990年、2000年、2008年の改定を経て、最新の保育指針は2017年に改定告示、2018年に施行されています。
2008年以降、約10年ぶりとなる2018年に改定された背景としては、共働き家庭や核家族化の進展による保育所利用児童数の増加、地域のつながりの希薄化、児童虐待相談件数の増加など、子どもを取り巻く社会状況の変化があります。
保育所保育指針の改定ポイント
2018年に行われた保育所保育指針の改定ポイントは、以下の5つです。
乳児・3歳未満児の保育に関する記載の充実
保育所保育指針改定では、乳児・3歳未満児の保育に関する記載が充実しました。
乳児・3歳未満児は、心身の発達の基盤を作る重要な時期です。
乳児期・3歳未満児の保育のねらいは、5領域に添って、以下の3つの視点で整理されています。
■健やかに伸び伸び育つ「身体的発達」に関する視点
■身近な人と気持ちを通じ合わせる「社会的発達」に関する視点
■身近なものとの関わりで感性を育む「精神的発達」に関する視点
保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ
保育所が、幼稚園や認定こども園と同じく、幼児教育を行う教育施設であると位置づけられたことも、2018年の保育所保育指針改定のポイントです。
これに伴い、保育所においても、5領域で整理した保育のねらいを通して、10の姿を意識した保育計画を立案、実行、評価をしていくことが求められています。
安全な保育環境の確保など、「健康及び安全」の記載の見直し
保育所保育指針の改定では、子どもたち一人ひとりが安全な保育環境で成長していけるように「健康及び安全」の記載が見直されています。
特に食育やアレルギー対応、感染予防や災害への備えなど、重大事故につながらないよう、子どもの健康と安全についての内容が充実した点もポイントです。
「子育て支援」の章を新設し、記載を充実
子どもを取り巻く社会の変化により、保育所は園児の保護者の支援だけではなく、地域に住む親子を支援する機関としての役割も求められるようになりました。
そこで、保育所保育指針には「子育て支援」の章が新設され、子育て相談や一時預かりだけではなく、発達支援などの個々のニーズへの対応、児童相談所などと連携して児童虐待への適切な対応を図るなどの記載が充実しています。
研修機会の確保・充実など、職員の資質向上に関する記載の充実
保育所は、子育ての一旦を担うだけでなく、保護者への支援や地域における子育て支援などにまで役割を広げています。
こうした社会状況の変化に伴い、保育所保育指針の改正では、一人ひとりの専門性や人間性の向上のために、研修機会の確保や充実など、職員の資質向上に関する記載が充実されました。
保育所・幼稚園・認定こども園は教育施設!保育指針改定のポイントを押さえよう
2018年に改定された保育所保育指針では、保育所も幼稚園・認定こども園と同じく、教育施設だと位置づけられ、5領域や10の姿を目指す取り組みが求められるようになりました。
保育所に限らず、幼稚園や認定こども園でも、子どもたちが安心してのびのび過ごせる、安全で充実した環境が必要になるでしょう。
設計事務所であるサイプラス(SAI+)は、保育所や幼稚園、認定こども園など、数多くのこだわりの園舎を設計してまいりました。
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