0歳児クラスの保育室では、まだ寝返りもできない赤ちゃんと、棚につかまって伝い歩きをする赤ちゃんが、同じ部屋で過ごしていることがあります。
同じ「0歳児」というくくりでも、月齢によって見えているものも、できることも、大きく違います。
保育所保育指針は、0歳児の育ちを3つの視点で示しています。「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」の3つです。この3つの視点は、月齢によって現れ方が大きく変わります。
月齢によって、赤ちゃんの世界はこれほど変わる
寝ている時期とはいはいの時期とでは、見えるもの・触れるものが別世界のように違います。
寝ている時期は、天井と抱っこがほとんどを占める
生まれてしばらくの間は、多くの時間を仰向けやうつ伏せで過ごします。
見えているのは天井や、抱き上げてくれる保育者の顔がほとんどです。声をかけると応えてもらえる、触れてもらえる。そのくり返しが、この時期の安心につながります。
寝返り・お座りで、手を伸ばす先ができる
寝返りやお座りができるようになると、そばにある玩具に手を伸ばそうとし始めます。
手を伸ばしても届かない玩具に近づこうとするうちに、はう動きが出てきます。少し先に置かれた物が、体を動かす理由になる時期です。

写真: Анастасия Триббиани / Pexels
はいはい・つかまり立ちで、行動範囲が部屋全体に広がる
はいはいができるようになると、赤ちゃんは自分の意思で部屋の中を移動し始めます。
つかまり立ちの時期には、低い棚や柵につかまって体を支え、目線の高さが変わります。柵につかまって立ち上がり、欲しかった玩具にようやく手が届く。そんな場面が増えていきます。
国の基準が示す、動き始める子への広さの変化
はいはいをする赤ちゃんの保育室には、はいはいをしない子の部屋より広い面積が求められています。
乳児室とほふく室で、面積の基準が変わる
国の基準は、2歳未満の子どもの保育室に、1人あたりの面積の下限を定めています。はいはいをしない子には1人あたり1.65平方メートル以上、はいはいをする子には1人あたり3.3平方メートル以上です。
基準の上では、はいはいをしない子の部屋が乳児室、はいはいをする子の部屋がほふく室です。同じ0歳児でも、動き始めた子には、はいはいをしない子のおよそ倍の広さが要るということです。上乗せの基準を定めている自治体もあるため、計画地の自治体には早めに確認しておくと安心です。
「基準を満たす」と「使いやすい部屋になる」は別の話
この面積は、あくまで最低ラインです。
たとえば定員12名の0歳児クラスを一つの部屋で保育するなら、全員がはいはいをする想定で12人×3.3平方メートル=39.6平方メートルが下限です。全員が寝ている想定なら、12人×1.65平方メートル=19.8平方メートルです。実際の部屋には両方の子がいるので、月齢の構成を見ながら、この2つの数字の間でどれだけの広さを取るかを考えます。
同じ広さでも、寝ている子とはいはいする子が一緒に過ごす部屋にするのか、動きの段階でゆるやかに場所を分けた部屋にするのかで、使い心地は大きく変わります。どちらの部屋にするかを決めるのが設計です。
保育者が困る場面から、部屋の役割を考える
保育者は複数の赤ちゃんを同時に見るため、目も手も足りなくなる場面が何度も出てきます。
抱っこや授乳で、手がふさがる場面
国の基準では、乳児おおむね3人につき保育士1人以上の配置が定められています。定員12名のクラスなら、保育士は4人以上です。
1人を抱いて授乳している間も、残りの子どもたちから目は離せません。けれど、授乳中の手はすぐには空けられません。だからこそ、抱っこをしたまま部屋の奥まで見渡せる位置に、授乳の場所を置けるかどうかが考えどころになります。授乳の位置と合わせて、保育者の動線を短くする考え方は、保育者の動線を短くすると何が変わるかでも整理しています。
月齢の違う子を、一度に見守る場面
寝ている子のそばで、はいはいする子が動き回る場面は、0歳児クラスでは珍しくありません。
この時期の育ちは個人差が大きく、同じ部屋にいても一人ひとりに合わせた関わりが要ります。月齢の違う子が同じ部屋にいても死角ができない配置にしておけば、保育者が部屋を離れる時間そのものを減らしやすくなります。
一人ひとり違う午睡のリズムに応える場面
月齢による生活リズムの違いを尊重した午睡も、大切なことの一つです。
起きている子の声や物音が、眠っている子の睡眠を妨げない場所をどう確保するか。これは保育者が「静かにさせなければ」と気を張らずに済むかどうかにも関わってきます。
床・壁・天井から考える、空間づくりの工夫
部屋のどこでも同じつくりにするより、月齢の育ちに応じて場所ごとに作り分ける方法があります。床の素材を場所ごとに変える、壁沿いに造作を設ける、天井の照明を工夫する、といったやり方です。環境が子どもの育ちを支えるという見方は、レッジョ・エミリア教育の「第三の教師」でも語られています。
床を、寝る場所と動く場所で分けて考える
床の仕上げそのものを、はいはいの練習をする場所と午睡をする場所とで変えてみるのも一つの手です。
段差をつけず、素材の違いや小さな縁取りだけで場所の切り替わりを示す方法があります。はいはいする子がつまずきにくく、寝ている子の場所にも自然と踏み込みにくくなります。寝ている子の安心を守りながら、動き始めた子の意欲も妨げない分け方です。
壁沿いを、つかまり立ちの練習の場にする
壁沿いには、低くて丈夫な造作を連続させ、つかまり立ちの手がかりにする方法があります。
壁面の造作でも、つかまって立ち、玩具に手が届く場面が生まれます。手が届く高さに危険なものを置かない設計と組み合わせれば、転んでも大きなけがにつながりにくい場所で、体を動かしたい気持ちに応えられます。
天井と光を、寝ている時期の視界として考える
天井の素材や照明の当たり方は、寝ている赤ちゃんの視界として見直せます。
仰向けで過ごす時間が長い時期には、天井がほぼ唯一の景色になります。照明を真上に置かず、光が直接顔に当たらない位置にずらす。天井の一部を木目のパネルにして、見上げたときに目で追える模様をつくる。そうした工夫も考えられます。
午睡の場所と、隣の部屋とのつなぎ方
午睡のための一角は、完全な別室にせず、ゆるやかな仕切りや小さな窓でつなぐ手もあります。
物音を抑えながらも保育者からは気配が伝わる関係にしておけば、複数の月齢が同じ部屋で過ごしやすくなります。様子を見に離れる回数も少なくて済みます。
0歳児保育室のかたちは、園の理念とご相談ください
ここで挙げた工夫にも、正解はひとつではありません。
月齢が違う子をどこまで同じ部屋でまとめて見守りたいか、どんな触れ合いを大切にしたい園か。その理念によって、答えは変わります。
抽象的な思いのままで構いません。「小さいうちから安心して過ごせる部屋にしたい」「動き始めた子の育ちを大事にしたい」。そうした思いを聞かせてもらえれば、その園らしい0歳児保育室のかたちを、打合せを重ねながら一緒に見つけていきます。
答えが園ごとに違うことは、その園だけの特色になります。お問合せ・資料請求からご相談ください。