絵本コーナーを作ったのに、子どもがなかなか腰を落ち着けないという声を聞くことがあります。
走り回る子がコーナーの前を通り抜けていったり、座った子がすぐに出ていってしまったりします。広さや本の冊数を見直しても、居心地はなかなか変わりません。
鍵になるのは、「ちょうどよく囲まれているか」という感覚です。
絵本コーナーが使われなくなるとき
動線と一体化しているか、逆に囲いすぎて目が届かないか。多くの場合、どちらかに偏っています。
動線と地続きになっている場合
保育室の隅に棚を並べただけのコーナーは、走り回る遊びの動線とつながりやすくなります。
子どもは足を止めにくく、絵本を広げても落ち着いて座っていられません。
囲いすぎて目が届かない場合
逆に、壁で四方を囲んで個室のようにすると、保育者からは中の様子が見えにくくなります。
見守りにくい場所は、安全面が気になって使われなくなっていきます。
ちょうどよい「囲まれ感」
必要なのは、体は囲まれていても、目線は通っている状態です。
この感覚を、ここでは「囲まれ感」と呼びます。
「囲まれ感」をつくる仕切りの高さ
囲まれ感は、天井まで届かない、子どもの腰の高さくらいの仕切りから生まれます。
体がすっぽり収まる高さ
座って絵本を読む子どもの体は、腰高くらいの棚があれば、たいていその内側にすっぽり収まります。
顔を上げれば天井は見えても、周りの様子はほどよく仕切られている状態です。

写真: Marta Wave / Pexels
人は、見渡せる場所と、囲われて落ち着ける場所の両方があると心地よく感じる、という考え方が環境心理学にはあります。
囲まれすぎても、開けすぎても落ち着かない。これは絵本コーナーにも、そのまま当てはまります。
大人の目線は通す
棚を可動式にして腰高にとどめておけば、保育者は立ったまま中の様子を見渡せます。
壁で個室にするのではなく、家具の配置だけで「ここは別の場所」だと感じてもらうのが狙いです。
造作の壁で囲むと囲まれ感は強まりますが、レイアウトを変えにくくなります。年度替わりのクラス編成のたびに模様替えをしたい園なら、可動式の棚のほうが向いているかもしれません。
保育室に「くつろぎの場」をつくる
保育室は、生き生きと活動できる場であると同時に、落ち着いてくつろげる場でもあることが大切です。
活動の場の中に、ひと息つける一角を
にぎやかな時間が続く部屋では、疲れたときや気持ちを切り替えたいときに、身を置ける場所が要ります。活動の場から離れすぎず、それでいてひと息つける一角があると、子どもは自分で過ごし方を選べます。
絵本コーナーが、その一角になる
絵本コーナーは、そうした落ち着ける一角の代表的な形です。囲まれ感は、「ここなら落ち着ける」という感覚を空間の形にする手段のひとつです。
家具配置と本の見せ方
表紙が見えるように置いた本ほど子どもは手に取りやすくなり、読む場所とくつろぐ場所の両方があるとさらに使われやすくなります。
表紙を見せる棚
棚を背表紙だけで埋めると、どんな本かひと目では分かりません。
数冊だけでも表紙を見せて置く場所をつくると、子どもが自分で選びやすくなります。
机で読む場所とくつろぐ場所
絵本コーナーには、使い方の違う2つの場所があると使われやすくなります。
2人くらいが並んで広げられる机と、寝転んだり寄りかかったりできるくつろぎのスペースです。姿勢を自分で選べることも、居心地のよさにつながります。
地震のときの安全
絵本コーナーは、子どもが座り込んで過ごす場所です。棚が倒れたり、上の物が落ちたりしないように、棚を置く位置を決めるときにあわせて考えておきます。
東京消防庁は、L型金具とネジで家具の上部を壁に留める方法を案内しています。ネジで留める器具は、転倒対策の中でも特に効果が高いとされています。
腰高の棚は、背の高い棚より、倒れたときの勢いも本が落ちる高さも小さくなります。ただ、低いから固定しなくてよいわけではありません。腰高の棚でも、壁に固定しておくと安心です。
可動式の棚でも、置く場所が決まっているなら壁や床、難しければ家具同士を背合わせに固定して安定性を高めておきます。レイアウトを変えるときは、固定をいったん外して付け直す、と決めておきます。キャスター付きの棚は、動かすとき以外はキャスターをロックします。動かす機会が多い棚には、壁や床に着脱式のベルトでつなぐ方法もあります。
本の重さにも気を配ります。本棚は重い物を下の段に入れて、重心を低くするのが基本です。大判の絵本や図鑑は下段に置くと、棚の安定にもつながります。
扉つきの収納を絵本コーナーに置く場合は、扉の開きにも注意が必要です。開き扉が地震で開くと、中の物が散らばってケガにつながります。東京消防庁は、扉が開かないようにする器具や掛け金を付けることを挙げています。子どもが自分で本を出し入れする棚なら、扉をつけない棚にする手もあります。
隣に何のコーナーを置くか
絵本コーナーは、体を動かす遊びのコーナーから離すと落ち着いて読める場所になりやすくなります。
音や動きの大きい遊びとの距離
ブロックや運動遊びのすぐ隣に絵本コーナーを置くと、囲まれ感をどれだけつくり込んでも落ち着きにくくなります。
体がぶつかる不安や物音が、絵本に集中する気持ちを削いでしまうからです。
配置図で考える
主な動線から離れた角を選びます。角なら、壁の2面がそのまま背もたれになります。
残る2面のうち、動線に面した側には腰高の家具を置き、通り過ぎる子の視線や動きをさえぎります。もう一方の面は、半分ほどを家具でふさぎ、残りの一か所を子どもの出入口にします。ここが保育者の目線の通り道にもなり、立ったまま中を見渡せます。
内側は、壁沿いに表紙を見せる棚と机、その隣にくつろぎスペースと、使い方ごとに場所を分けて置きます。
コーナーづくり全体の考え方(絵本コーナー以外のコーナーの作り方や配置例)は、コーナーづくりで大事なことは?保育のポイントやレイアウト例を紹介でも扱っています。
絵本コーナーづくりは、SAI+(サイプラス)にご相談ください
ここまでの工夫はあくまで一例で、正解はひとつではなく、どんな絵本コーナーにするかは園の保育方針によって変わります。
静かに読むか、集まって読み聞かせるか
静かに一人で読める場所を大事にする園もあれば、絵本コーナーを読み聞かせでみんなが集まる場所として使う園もあります。
どちらを軸にするかで、仕切りの高さも家具の配置も変わってきます。一人でじっくり読む時間を大切にしたい園なら囲まれ感を強めに、読み聞かせで集まる場所にしたい園なら大人数で座れる開けた面を残す、という判断をします。

写真: Ksenia Chernaya / Pexels
まだまとまっていなくても構いませんので、一度ご相談ください
「静かに絵本と向き合える場所にしたい」「読み聞かせでみんなが集まれる場所にしたい」。そうした思いを、そのまま聞かせてください。
そこから、どんな仕切り方や家具配置がその園に合うのかを、打合せを重ねながら一緒に形にしていきます。答えが園ごとに違うことは、その園だけの特色になります。
お問合せ・資料請求からご相談ください。